中医鍼灸、そこが知りたい

規制緩和により鍼灸専門学校が増加し、それに伴い鍼灸師も増加している。世間の認知度は別として、増加傾向にある鍼灸師の中で、自分が行なった施術を理論立てて明確に説明できる鍼灸師がどれくらいいるだろうか。鍼灸とは「不思議なもの」というイメージを逆手に取り、理論的な説明を避けている鍼灸師も少なくないのではないだろうか。そして、いわゆる東洋医学の専門用語を、患者の日常生活や患者が理解できるわかりやすい表現に「翻訳」できる鍼灸師がどれくらいいるだろうか。この本を読むと、著者はそれらを当たり前のこととして行なっている「先生」であるとわかる。鍼や灸により、痛みが和らぎ、体調が回復し、体質が改善していく。そこに至るまでには長い歳月と数多くの人々を経てきた伝統と経験がある。『中医学』とは、共産革命後、それまでの中国伝統医学を理論体系化したもの。そのように認識している。「不思議なもの」という鍼灸は、世の一般に広めようと理論体系化した『中医学』により、施術者にも患者にも解釈・理解・説明ができるものとなる。患者と相対し、どのように接し、どのように捉え、どのように考え、どのように解釈・理論化し、どの方向を目指すのか。そしてそれらを説明し、どの配穴、どの手法を選択するのか。この本の中で、著者の臨床でのその過程を垣間見ることができる。自らに何が足りなくて、何が必要なのか、これから何をしていけばよいのか、自ら考え実践していくためのきっかけを与えられる本である。この本を読み終えたとき、自らの勉強不足、技術の鍛錬不足、認識や見解の未熟さを痛感し、何をすべきか気づくことでしょう。